公開シンポジウム 
自閉症者の語る自閉症の世界


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ミニ講演(日本語訳)
by ラリー・ビショネット(Larry Bissonnette)

もしも世界地図にラリーの家の場所が載っていたら、木々が並び、アウトドア風なニューイングランドの小さな州に私が住んでいることが示されるでしょう。私は、バーモント州というところに住んでいます。バーモント州は、メープルシロップと、穏やかでのどかな生活を送るという価値ある暮らしとクリエイティブな芸術的インスピレーションを私に与えてくれた、自由な政治でよく知られているところです。

自閉症の悲しみに溺れるのでなく、創造性という極上のワインを芸術的に味わうことを提供し、商いをしているということを言いたいと思います。作品に値段をつけることは、自分の能力を、意味ある賃金のために働くという暮らしに結びつけることを可能にしてくれます。通りを歩く世間一般の人々は、私に「自閉的行動障害を伴う重度の精神遅滞」というレッテルをはった心理評価のIQを見ただけではおそらく見過ごしてしまうような方法で、私という人間を理解しているのです。

若い頃は、今のように、様々な種類のキーボードに打ち込む複雑な言葉を通じてもてる知性を証明したり、自分を表現したりする術も力もなかったので、そんなレッテルをはりつけられることが可能でした。どうか、絵を重ねてはりつけたような私の言葉をいくぶん注意深く観察して、私の心と頭がどのように働くかを知るヒントにしてください。ラリーがコミュニケーションの坂を滑り降りながら、ぶつかったりかわしたりしているものは、実力に勝る知的な表現の可能性の破片ではなく、言語処理の困難というこぶなのです。

かつての私は、食べ物とか、ラジオの音楽チャンネルとかの具体的な事に関する欲求を口に出して言い、自分の意見や感情は醜悪な行動で表現しました。高齢の方の多くは、私の限られたコミュニケーションを見て、知性の枝葉は成長が途絶え、マクドナルドのチーズバーガーを筆頭に置く私の興味は重要性と知的豊かさに乏しいものに違いないと、信じることでしょう。嵐の雷が落ちて古い電線をなぎ倒すかのように、あるいはそれまでの信念をくつがえして改宗するという経験のように、タイピングを通じてコミュニケートができるようになったという経験は、私に大きな衝撃をもたらしました。そしてそれは、障害に関する社会の思い込みという制限を超える、計り知れない変化の中に、自分の中の知られざる思考やアイディアを置くということでもありました。

皆さんが今日見られているラリーの姿は、今から15年以上も前の出来事のおかげなのです。その時パスカルが、私にタイピングを紹介してくれました。彼のオフィスに私を招きいれ、私のような原始的な一本指でタイプする人間に、彼の時間と、コンピューターと、私の体に軽く触れる援助を提供してくれました。そうして口で話すことに対する私の中の衝動を、より意図的で機械的でないものへ、そして私に備わった機能的限界を超えた社会的関わりへと、押し広げてくれたのです。

私が得た成功の大部分は、長い期間を通じて援助が一環していたことと、こういった会議などで発表する機会をもてたことのおかげなのです。それと、映画に出演して私のハンサムぶりを見せつけるチャンスとかね。それは言わば、売れない俳優が突然大きなブレイクを迎えて、スターダムを駆け上がるという機会に自分の才能を注ぎ込むことにも似ているかもしれません。誰かがこの道を、上品かつ力強く歩けるようにその扉を開くためには、その人のサポート・チームの存在に加えて、さらに必要なものがあります。つまりそこには、口で話す以外の方法でコミュニケートする人たちに絶え間ない機会が提供されるための、〈平等〉という原理と、〈違い〉を受け入れ認めるという姿勢が、中心に位置づけられなければならないのです。


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